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教えて!シュガー先生

【失敗は成功のもと】失敗への恐れを乗り越える心の作り方

【失敗は成功のもと】
失敗への恐れを乗り越える心の作り方

探索活動と失敗の許容

「失敗は成功のもと」ということわざがあります。
これは失敗を通して成功率が高まることを意味しています。

しかし、私たちは同時に失敗を恐れる生き物でもあります。

今回の記事では、探索行動という言葉をキーワードに、
失敗への恐れを乗り越える方法について考えてみたいと思います。

探索行動とは何か?

探索行動というのは聞き慣れない言葉ですが、
これは見知らぬ何かを求めて色々と探し回る行動になります。

仕事で言えば、既存の手法がなかなか効果が上がらないので、
何か他にいい方法がないか色々と試してみるようなことになります。

これとは対照的なものに、探究行動というものがあります。
これはすでに知っていることをやり込むような行動になります。

仕事で言えば今まで用いられてきた既存の手法を徹底的に
やり込むような行動になります。

一般に成功率は、経験のある探究行動のほうが経験のない
探索行動よりも高くなりますので、私たちは、
どちらかを選べと言われれば失敗リスクの低い探究行動を取りがちです。

とはいえ、世の中には失敗を恐れず探索行動をする人もいますし、
臆病な人であっても時には探索行動をとってみようという
気持ちになることもあります。

ではどのような要因が私達の探索行動に影響するのでしょうか?

探索活動を高める要因

探索活動というのは、実はマーケティングの分野で
研究されてきた実績があります。

というのも、新しい商品やサービスを買ってもらうためには、
どんな人が探索活動を取りやすいかということを
知っておく必要があるからです。

少々古典的な研究になるのですが、
イリノイ大学のラジュ博士は、
探索行動を取りやすい人の性格について調べています(※1)。

これによると探索活動を取りやすい人は、

・曖昧さを許容できる
・教条主義(規則第一主義)的ではない
・柔軟性が高い

という3つの特徴があることが示されています。

では私たちはどんな時に探索行動を取りやすくなるのでしょうか?

これについては生理学分野と心理学分野で
いくつか研究されているのですが、

・睡眠がしっかり取れている時(※2)
・お腹の調子が良い時(※3)
・課題の難易度が適切な時(※4)

に探索行動を取りやすくなることが示されています。

つまり体の調子が整っていて、
課題が簡単すぎず難しすぎないときに
探索行動を取りやすいということになります。

では、なぜ課題の難易度が探索行動に影響するのでしょうか?

探索活動とドーパミン

私達の脳は様々な神経伝達物質で調整されていますが、
その中でもやる気を高める物質にドーパミンというものがあります。

リハ事典+: 報酬系その② 報酬系におけるドーパミンの特徴とは??

ドーパミンは報酬系の働きを高めることが知られています。
報酬系とは欲しい物を得るために
頭と体の働きを高めるための仕組みなのですが、
欲しい物を得られる見込みが高い時、
ドーパミンが分泌されて報酬系の活動が高まる
ことが分かっています。

また逆に欲しい物を得られる見込みが低いときには
ドーパミンの分泌は低下します。

では、こういった脳の仕組みを考えた時、
探索行動を取りやすくする目標の立て方というのは
どのようなものになるのでしょうか?

探索行動を取りやすくする目標の立て方

探索行動を取りやすくするためには
課題の難易度設定が大事になってきます。

簡単すぎても難しすぎても好ましくなく、
頑張れば手が届くくらいの目標設定が探索行動を
取りやすいということになります。

具体的には、営業で社内トップを目指すよりも、
営業受注率5%アップを目指したほうが
探索行動を取りやすくなりますし、

資産形成で言えば1億円の資産を目標にするよりも、
7%の利回りを目指したほうが
探索行動を取りやすくなります。

もうちょっと平たくいえば、
大きな目標よりも小さな目標のほうが
探索行動を取りやすくなるということになります。

まとめ

では、ここまでのお話をまとめてみましょう。

・探索行動とは見知らぬ何かを求めて色々と探し回る行為である。
・探索行動のとりやすさは生まれつきの性格と置かれた状況で変化する。
・体調を整え、適度な難易度の目標を設定することで探索行動を取りやすくなる。

ということになります。

大成功を狙おうとすると、
どうしても冒険の第一歩が出にくくなります。

しかし、地に足がついた目標は冒険の後押しをしてくれます。
一つ、手を伸ばせばつかめそうな目標を立ててみましょう!

【参考文献】(※1)Raju, P. S. (1980). Optimum stimulation level: Its relationship to personality, demographics, and exploratory behavior. Journal of consumer research, 7(3), 272-282.
(※2)Huber, R., Tononi, G., & Cirelli, C. (2007). Exploratory behavior, cortical BDNF expression, and sleep homeostasis. Sleep, 30(2), 129-139.
(※3)Bercik, P., Denou, E., Collins, J., Jackson, W., Lu, J., Jury, J., … & Collins, S. M. (2011). The intestinal microbiota affect central levels of brain-derived neurotropic factor and behavior in mice. Gastroenterology, 141(2), 599-609.
(※4)Blikstein, P., Gomes, J. S., Akiba, H. T., & Schneider, B. (2017). The effect of highly scaffolded versus general instruction on students’ exploratory behavior and arousal. Technology, knowledge and learning, 22(1), 105-128.

※3 Nguyen, M. L. (2020). Shared and idiosyncratic neural processing of naturalistic communication in the default mode network (Doctoral dissertation, Princeton University).

シュガー先生【シュガー先生 プロフィール】
本名:佐藤洋平(さとう ようへい)
脳科学専門のコンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表。
理学療法士。
現在富山大学医学博士課程にて心と体の関係についての研究を行う。
日本最大級の脳科学ブログである「脳科学 心理学 リハビリテーション」にて、ヒトとはなにか、をテーマに脳科学を超えて学際的な立場から記事を執筆中。