1. HOME
  2. 人間関係の悩み
  3. 幸せホルモン
  4. オキシトシン
  5. 「三人寄れば文殊の知恵」:チームの知性の高め方とは?前編
オキシトシン

「三人寄れば文殊の知恵」:チームの知性の高め方とは?前編

文殊の知恵と集団的知性

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがあります。

これは一人ひとりで考えるより、皆で考えるほうが良いアイディアが出ることを示しています。しかし、なぜ皆で考えたほうが良いアイディアが出るのでしょうか。また、どんな時、どんな条件で良いアイディアが出やすいのでしょうか。

今回は集団的知性という言葉をキーワードに考えていきたいと思います。

集団的知性とは何か?

私達人間は皆知性を持っています。

知性というのは、何かを知ったり、考えたり、判断したりする能力のことです。

これは高い人もいれば低い人もいて様々ですが、集団的知性というのは、この個人が持つ知性を集団に拡張したものになります。これはすなわち、世の中には賢い人がいるように、賢い集団もあるということですが、では集団的知性が高いチームにはどのような特徴があるのでしょうか。

集団的知性の特徴

集団的知性が高いチームには、以下の5つの特徴があることが知られています。

・女性の比率が高い
・コミュニケーション能力の高いメンバーが多い
・適度に多様性がある
・強力なリーダーシップがない
・心理的安全性(発言することに不安を抱かない雰囲気)がある

こういった条件が整った時、チーム内でのコミュニケーションが取りやすくなり、集団的知性が高まることが知られています。

ではなぜチーム内でのコミュニケーションが高くなるとチームの知性を高くなるのでしょうか?

ここでの鍵になるのは「創発」という概念です。

創発とはなにか?

創発とは、色々な要素が組み合わさることで、一つ一つの要素を超えたものが生じる現象です。分かりやすい例としては、スイミーやブレーメンの音楽隊、あるいは桃太郎のようなものがあるでしょう。

ロバ一匹、犬一匹、ネコ一匹、ニワトリ一匹の力は弱いにしても、他の仲間と息を合わせることで一気に大化けするような現象が創発になります。

集団的知性もこの創発という概念で説明することが出来ます。小さな魚の群れが大魚になり、4匹の家畜が怪物になるように、凡人の群れであっても、互いに繋がり合ってコミュニケーションを取りあうことで、天才のような知性を持ちうるというのが集団的知性になります。

またこれを実証するように、あるチームの集団的知性は、メンバーの知能ではなくコミュニケーション能力によって決まってくることも報告されています。このようにチームの集団的知性を高めるためには、メンバー同士のつながりやコミュニケーション能力が大事になるのですが、ではどのようにすればメンバー同士のつながりを深めることができるのでしょうか。またどうすればメンバーのコミュニケーション能力を高めることができるのでしょうか。

方法論としては女性ホルモンの一種であるオキシトシンに着目したものがあります。というのも、オキシトシンにはコミュニケーション能力を高める効果があるからです。

後編では、オキシトシンの分泌を高める方法や、オキシトシンを介して仲間同士の絆を深める方法についてお話したいと思います。

【参考文献】

・Domes, G., Heinrichs, M., Michel, A., Berger, C., & Herpertz, S. C. (2007). Oxytocin improves “mind-reading” in humans. Biological psychiatry, 61(6), 731-733.
・Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative science quarterly, 44(2), 350-383.Woolley, A. W., Aggarwal, I., & Malone, T. W. (2015). Collective intelligence and group performance. Current Directions in Psychological Science, 24(6), 420-424.
・Woolley, A. W., Aggarwal, I., & Malone, T. W. (2015). Collective intelligence and group performance. Current Directions in Psychological Science, 24(6), 420-424.

シュガー先生【シュガー先生 プロフィール】
本名:佐藤洋平(さとう ようへい)
脳科学専門のコンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表。理学療法士。現在富山大学医学博士課程にて心と体の関係についての研究を行う。
日本最大級の脳科学ブログである「脳科学 心理学 リハビリテーション」にて、ヒトとはなにか、をテーマに脳科学を超えて学際的な立場から記事を執筆中。
趣味は料理、人間観察、読書(人間に関するものであれば社会学から哲学、経済学まで全般)、語学(フランス語)。
屋号のオフィスワンダリングマインドは、心理学のmind wandering(心のお散歩、ぼんやり頭、ひらめきの源泉)に由来。