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教えて!シュガー先生
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【急がば回れ】正しくリスクをとる方法とは?

【「急がば回れ」正しくリスクをとる方法とは?】

なぜ急いでいるときには失敗しやすいのか?

「急がば回れ」ということわざがあります。
これは急いでいるときには失敗しやすいので、
殊更丁寧に事を進めることを説いたものです。

たしかに自分のことを思い出しても
性急な判断には失敗が多かったような気がします。

今回は、急いでいるときでも
正しく判断をするための方法について
考えてみたいと思います。

リスク選好性とタイムプレッシャー

 リスク選好性とは、どれだけリスクを取りたがるかという指標になります。
投資をやったことがある人なら分かると思うのですが、
リスクとリターンというのは裏表の関係にあります。

「虎穴に入らずんば虎子を得ず」でもないですが、
リスクが高ければリターンも高くなりますし、逆もまた然りです。

お金と暮らしの情報サイト〈もんじゃ〉「知っておきたい資産運用のキホン【第1回】リスクとリターンの関係を知ろう」

またタイムプレッシャーというのは時間制限を意味します。
リスク選好性はタイムプレッシャーがかかることで
高くなったり低くなったりすることが分かっています(※1)。

では、一体どんなときにリスク選好性が高くなり、
またどんなときに低くなるのでしょうか?

リスク選好性が高くなるとき/低くなるとき

 タイムプレッシャーでリスク選好性が高くなるのは、
ある対象にポジティブな印象を持っているときになります(※2)。

これはテレビショッピングなどで、好意的な情報をPRされた後に
「30分間の特別限定!」などと言われると、
リスク選好性が高まり、ついつい買ってしまうような現象になります。

これとは逆にタイムプレッシャーでリスク選好性が低くなるのは、
ある対象にネガティブな印象を持っているときになります(※2)。

例としては、あまり良い噂を聞かない営業マンに契約を迫られた場合、
必要以上に慎重になるようなものになります。

これはもともとネガティブな印象があることで
リスク選好性がいつもよりも低くなることが影響しています。

では、なぜタイムプレッシャーでリスク選好性が変わるのでしょうか?

リスク選好性が高くなるとき

タイムプレッシャーでリスク選好性が変わる理由としては、
タイムプレッシャーがかかることで、
ポジティブな見立てはよりポジティブに、
ネガティブな見立てはよりネガティブに変化すること
が関係すると考えられています(※3)。

つまり、時間がないときには、
もともとキラキラ見えていたものはよりキラキラし、
もともとダメに見えていたものは、
さらにダメに見えることでリスク変動性が
変化するのではないかと考えられています。

 このようにタイムプレッシャーがかかっている時には、
もともとの印象に引っ張られて
正しいリスク評価ができなくなってしまいます
が、
これを避けるためにはどのような方法があるのでしょうか?

 ある研究では、抽象的なことを考えることで、
タイムプレッシャーがあっても
正しくリスク評価ができることが報告されています(※3)。

これは、企業で言えば企業理念、個人で言えば、
自分の信条に思いを馳せることで、
急いでいるときでも正しくリスク判断が
できるようになるということになります。

まとめ

 では、ここまでのお話を一つまとめてみましょう。

・時間制限がある状況ではリスク選好性が変化する。

・時間制限がある状況では、もともと持っていた印象が強化され、
正しいリスク評価ができなくなる。

・しかし、事前に抽象的な思考を巡らすことで、
時間制限がある状況でも正しくリスク評価できるようになる。

ということになります。

 仕事にしても学びにしても人生は選択の連続です。
ゆっくり考えられればいいのですが、必ずしも時間があるとは限りません。

そんなときは一度、自分に哲学的な問いかけをすることで
「急がば回れ」を実践できるようになるかもしれません。

ちなみに脳の中では真善美は同じように
処理されているという話もあります(※4)。

美意識を持った判断で選択の質を高めてみましょう!

【参考文献】

(※1)Young, D. L., Goodie, A. S., Hall, D. B., & Wu, E. (2012). Decision making under time pressure, modeled in a prospect theory framework. Organizational behavior and human decision processes, 118(2), 179-188.

(※2)Huber, O., & Kunz, U. (2007). Time pressure in risky decision-making: effect on risk defusing. Psychology Science, 49(4), 415.

(※3)Saqib, N. U., & Chan, E. Y. (2015). Time pressure reverses risk preferences. Organizational Behavior and Human Decision Processes, 130, 58-68.

(※4)Jacobsen, T., Schubotz, R. I., Höfel, L., & Cramon, D. Y. V. (2006). Brain correlates of aesthetic judgment of beauty. Neuroimage, 29(1), 276-285.

シュガー先生【シュガー先生 プロフィール】
本名:佐藤洋平(さとう ようへい)
脳科学専門のコンサルティング業務を行うオフィスワンダリングマインド代表。
理学療法士。
現在富山大学医学博士課程にて心と体の関係についての研究を行う。
日本最大級の脳科学ブログである「脳科学 心理学 リハビリテーション」にて、ヒトとはなにか、をテーマに脳科学を超えて学際的な立場から記事を執筆中。